2014年7月16日水曜日

「the very 最上級」について



                                        
She is by far the best singer in her class.
= She is the very best singer in her class.
(彼女はクラスでずば抜けて歌がうまい)
― 『NEXT STAGE』(桐原書店)3rd editionp. 77
                                        
が、このveryは「ずば抜けて」ではなく「まさに」という意味である。

(1) [the/that/ones ~; -est型の最上級,best,worstまたはfirst,nextなど限定的な語を強調して]本当に、確かに 
―『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)第4版

(2)  [[(形)の最上級,first,last,same,next,oppositeやownの前で強調して]]まったく,まさに,本当に 
―『ウィズダム英和辞典』(三省堂)第3版
(3) [[ones ~,the ~]]全く、本当に、まさしく〈-estによる最上級,first, last,next,best,worst および same,opposite,wonなどを強調〉―『コアレックス英和辞典』(旺文社)第2版

文法書の例文訳も「~こそまさに」という意味である。

(4) He is the very best player on the team.(彼こそチーム随一の選手です)
― 江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)、p. 180

(5) This is the very best dictionary.(これがまさに最上の辞書です)
―『ロイヤル英文法』(旺文社)、p. 367

(6) This is the very best of all.(これこそまさに一番よい)
―中原道喜『マスター英文法』(旺文社)、p. 292

(7) She was wearing her very best hat.(彼女はまさに取って置きの帽子を被っていた)
―清水周裕『現代英文法』(数研出版)、p. 181

ところが入試問題集には「ずば抜けて」に類するものが多々登場する。

(8) これは私が今までに本を書いたテーマの中でも飛びぬけてすばらしい。
 
This is ( theme / on / the / best / very ) which I have ever written a book.(明海大)

【解答】This is the very best theme on which I have ever written a book.


― 『Vintage』(いいずな書店)、p. 178

(9) This is the (    ) best book Ive ever read.

① far ② most ③ much ④ very (センター試験)


【訳】これは私が今まで読んだ中でも飛び抜けてすばらしい本である。


― 『UPGRADE』(数研出版)、p. 150
 
(10) This is much the best song. = This is the very best song.
(これが断トツでいちばんいい歌だ) ― 『Focus Finder』(桐原書店)、p. 117

これを後押しする辞書の記述もないではない。

(11) これは中でもずば抜けてよいものです。

This is much the best of all. / This is the very best of all.


―『ルミナス和英辞典』(旺文社)

気になるのは次の記述である。

(12) the very best wine まさしく最良のワイン=much[by far] the best wine)
―『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)第4版

が、much[by far] the best wineを「まさしく最良のワイン」とは訳せないであろうから、私はイコールと表記することには反対である。むしろ、次のように訳し分ける方がすっきりする。

(13) He is the very best baseball player in our school.
(彼こそ本校で野球の最優秀選手だ)
cf. He is much the best baseball player in our school.
(彼は本校ではずばぬけて野球がうまい)
― 小野経男英文法』(数研出版)、p. 325

つまり、「まさに最優秀」(1番であることが疑いない)と「ずば抜けて」(2番目以下との差が大きい)とは意味合いが異なるということである。
 
 が、そもそもの問題は、「the very 最上級」のveryを「~こそまさに」の意味であることを文法書が明記していないことにある。次の記述は唯一例外的である。

(14) 次のveryは形容詞で、「まさにその~」などと名詞を強める。
He did it under my very eyes.(彼はそれをまさに私の目の前でやりました)
He is the very best player on the team.(彼こそチーム一の選手です)
―『インテグレート新総合英語』(第一学習社)、p. 238