2015年4月12日日曜日

prepare for the possibility of a food shortage (食糧不足の可能性に備える)



『英単語ターゲット1900』(旺文社)4訂版に次の例文がある。

117 It is wise to prepare for the possibility of a food shortage. 
   (食糧不足の可能性に備えておくことは賢明だ)

が、「可能性に備えておく」という日本語は変ではないか。

ここは、「食糧不足の可能性があるので備えておくことが賢明だ」とか「食糧不足にならないとも限らないので備えをしておくことが賢明だ」のように訳すべきなのではないだろうか。

なお、『英辞郎』には

prepare for the possibility of ~ ~の事態に備える

とあるので、「食糧不足の事態に備えることが賢明だ」といった訳も考えられるところである。

2015年4月7日火曜日

「的外れ」の英訳について


A great deal of the speaker's argument was ( beside the point, beyond question, off center, out of hand ).

―伊藤和夫編『新・英文法頻出問題演習』(駿台文庫)新装版 PART II 熟語編、P. 15

【解答】 be beside the point 要点をはずれている、無関係である
    
     (話し手の議論の大部分は見当はずれだった)

- - - ○ - - -

「的外れ」を besides the point とした誤りがネットに散見されるが、あくまでも s のない beside が正解である。 


『ジーニアス和英辞典』(大修館)第2版 の「的外れ」を見ると

その質問は的はずれだThe question is beside [ off,  away from ] the point.

となっている。Google で検索をかけると次のような頻度であった。

away from the point  275,000,000 件 
off the point      261,000,000 件 
beside the point            29,800,000 件

また、point の代わりに mark が用いられることもある。検索結果は次の通りである。

off the mark       43,100,000 件 
wide of the mark            1,130,000 件 
beside the mark      315,000 件

beside the point, wide of the mark は『Next Stage』にも出てくるので覚えておきたい。また、

to the point (要領を得た) ⇔ beside the point (要領を得ない)

にも注意。 

His explanation is always to the point.(彼の説明はいつも要領を得ている)


2015年4月5日日曜日

be on the point of ~(まさに~しようとしている)


He was (      ) the point of leaving when I arrived there.

― 伊藤和夫編『新・英文法頻出問題演習』(駿台文庫) 新装版 PARTII 熟語編、p. 19

【解答】be on the point of -ing(=be about to -)まさに―しようとしている。

    (私がそこへ着いたとき、彼はちょうど出かけようとしていた)


- - - ○ - - -

point は「点」なので、at は使えないものかと調べ直したら、次のような記述があった。

at the point of A = on the point of A 
on the point of A まさにAするところで(Aは(名)(動名)) Kelly was on the point of bursting into tears. ケリーはまさにわっと泣き出さんばかりであった. 
― ウィズダム和英辞典(三省堂)第3版


この熟語表現は『Next Stage』(桐原書店)や『Vintage』(いいずな書店)などの英文法問題集には掲載されていないし、『英熟語ターゲット1000』(旺文社)や『システム英熟語』(駿台文庫)にもない。したがって、出題頻度はそれほど高いとは思われないが、掲載されているものもいくつか見受けられる。


be about to do         まさに~しようとしている
be on the point of doing              ― 英熟語Always1001(河合出版)

be on the point of doing まさに~しようとして
be about to : be on the verge of doing 
Henry was on the point of leaving when his mother called on him.
母親が訪ねてきた時、ヘンリーはまさに出かけようとしていた。 (駒沢大)
 ― ジーニアス英熟語1000(大修館書店)改訂版

が、いずれも前置詞 at への言及はみられない。

 最後に専門書の記述を見ておこう。

point of (s.), at / on / upon the まさに…しかかって 
Suzi was at the pointo of crying when the teacher stopped the other children from teasing her.(ほかの子供たちがスージーをいじめるのを先生がとがめたときには、彼女はいまにも泣き出しそうだった) 
アメリカ語法では at が好まれる.上例を次のように表現してもよい.Suzi was just about to cry .... 
 三浦新市 / ナタリー・リード共著 『前置詞中心 英語表現辞典』(大修館書店)

2015年2月16日月曜日

英作文検討 (即戦ゼミ4 大学入試英作文総演習)

(1) 近年物価はいちじるしく上昇し、多くの人々がそれに困っています。

【訳例】Prices have gone up remarkably in recent years, and many people are suffering from it.

(検討1)時をあらわす副詞の位置
「近年物価は」のように時をあらわす副詞が主語の前に置かれる場合、英文でも副詞は前置される。

(1.1) a.  In recent years,  prices have gone up remarkably (近年物価が著しく上昇している)
b.  Prices have gone up remarkably in recent years (物価が近年著しく上昇している)

(検討2)「近年」
recently なども和英辞典に見られるが、基本的には使い分けたい。

(1.2) a.  in recent years (近年)
b.  recently      (最近/近頃)

(検討3)冠詞の有無

(1.3) a.  prices    (物価)
b.  the prices (その物価)

(検討4)「物価が上昇する」

(1.4) a.  prices have gone up   10,700,000 件
           b.  prices have increased   536,000 件
c.  proces have risen       437,000 件  ※件数はGoogle検索による。

単に「上昇する」は、go up が断トツで多いが、

(1.5) a. prices have gone up    remarkably 15 件
           b. prices have increased remarkably   23 件
           c. prices have risen         remarkably   43 件

のようにremarkably(著しく)が付けば、むしろ避けられる傾向が見られる。これは、重い remarkably と軽い go up の組み合わせ(collocation)の相性が悪いからだと考えられる。

つまり、副詞がなければ go up という軽い言い回しが圧倒的に好まれるのに対して、重い副詞が付加されれば、increase ないしは rise という重い語が用いられがちだということである。

(検討5)「困っている」
be troubled by ~ や have a hard time あたりでもOKだと思われる。

(1.6) a.  many people are suffering from it
b.  many people are troubled by that
c.  many people have a hard time (of it)

(検討6) and の有無
日本語が1文だからといって英文も必ず1文で書かなければならないというものではない。

(1.6) a.  … remarkably, and many people are suffering from it
b.  … remarkably. Many people are suffering from it.

【池内訳】 In recent yearsm, prices have increased remarkably, and many people have a hard time of it.

2014年7月16日水曜日

「the very 最上級」について



                                        
She is by far the best singer in her class.
= She is the very best singer in her class.
(彼女はクラスでずば抜けて歌がうまい)
― 『NEXT STAGE』(桐原書店)3rd editionp. 77
                                        
が、このveryは「ずば抜けて」ではなく「まさに」という意味である。

(1) [the/that/ones ~; -est型の最上級,best,worstまたはfirst,nextなど限定的な語を強調して]本当に、確かに 
―『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)第4版

(2)  [[(形)の最上級,first,last,same,next,oppositeやownの前で強調して]]まったく,まさに,本当に 
―『ウィズダム英和辞典』(三省堂)第3版
(3) [[ones ~,the ~]]全く、本当に、まさしく〈-estによる最上級,first, last,next,best,worst および same,opposite,wonなどを強調〉―『コアレックス英和辞典』(旺文社)第2版

文法書の例文訳も「~こそまさに」という意味である。

(4) He is the very best player on the team.(彼こそチーム随一の選手です)
― 江川泰一郎『英文法解説』(金子書房)、p. 180

(5) This is the very best dictionary.(これがまさに最上の辞書です)
―『ロイヤル英文法』(旺文社)、p. 367

(6) This is the very best of all.(これこそまさに一番よい)
―中原道喜『マスター英文法』(旺文社)、p. 292

(7) She was wearing her very best hat.(彼女はまさに取って置きの帽子を被っていた)
―清水周裕『現代英文法』(数研出版)、p. 181

ところが入試問題集には「ずば抜けて」に類するものが多々登場する。

(8) これは私が今までに本を書いたテーマの中でも飛びぬけてすばらしい。
 
This is ( theme / on / the / best / very ) which I have ever written a book.(明海大)

【解答】This is the very best theme on which I have ever written a book.


― 『Vintage』(いいずな書店)、p. 178

(9) This is the (    ) best book Ive ever read.

① far ② most ③ much ④ very (センター試験)


【訳】これは私が今まで読んだ中でも飛び抜けてすばらしい本である。


― 『UPGRADE』(数研出版)、p. 150
 
(10) This is much the best song. = This is the very best song.
(これが断トツでいちばんいい歌だ) ― 『Focus Finder』(桐原書店)、p. 117

これを後押しする辞書の記述もないではない。

(11) これは中でもずば抜けてよいものです。

This is much the best of all. / This is the very best of all.


―『ルミナス和英辞典』(旺文社)

気になるのは次の記述である。

(12) the very best wine まさしく最良のワイン=much[by far] the best wine)
―『ジーニアス英和辞典』(大修館書店)第4版

が、much[by far] the best wineを「まさしく最良のワイン」とは訳せないであろうから、私はイコールと表記することには反対である。むしろ、次のように訳し分ける方がすっきりする。

(13) He is the very best baseball player in our school.
(彼こそ本校で野球の最優秀選手だ)
cf. He is much the best baseball player in our school.
(彼は本校ではずばぬけて野球がうまい)
― 小野経男英文法』(数研出版)、p. 325

つまり、「まさに最優秀」(1番であることが疑いない)と「ずば抜けて」(2番目以下との差が大きい)とは意味合いが異なるということである。
 
 が、そもそもの問題は、「the very 最上級」のveryを「~こそまさに」の意味であることを文法書が明記していないことにある。次の記述は唯一例外的である。

(14) 次のveryは形容詞で、「まさにその~」などと名詞を強める。
He did it under my very eyes.(彼はそれをまさに私の目の前でやりました)
He is the very best player on the team.(彼こそチーム一の選手です)
―『インテグレート新総合英語』(第一学習社)、p. 238

2014年4月30日水曜日

liveは状態動詞であっても進行形にできる


liveは状態動詞なので進行形にできない」と平気で言う学校の教師や塾の講師が少なくない。私は2人に1人がこのように思い込んでいるのではないかと感じている。
 
 おそらく辞書を引く習慣がないのであろう。だからこんな出鱈目(でたらめ)な説明がまかり通るのである。


(1)『ジーニアス英和辞典 第4版』(大修館書店)
I live in Tokyo.
私は東京に住んでいる《×In Tokyo I ~.は不可;cf. In Paris he died.

I am living in Tokyo.
今は東京に住んでいる《現在進行形は現在の一時的居住を表す》

(2)『ウィズダム英和辞典 第3版』(三省堂)
“Where do you live?” “I live in London.” 「お住まいはどちらですか」「ロンドンです」(“Right now I’m living in London.” のように進行形で言うと一時的な居住地を表す)

(3)『コアレックス英和辞典 第2版』(旺文社)
Where do you live? お住まいはどちらですか / I live in Perth [near the school, on Baker Street]. パース[学校の近く、ベーカー街]に住んでいる / I’m living with my parents. 今両親と住んでいます(◆liveを進行形で使うと、一時的に居住している状態を表す)

 よく参考書や問題集にいくつか「進行形にできない動詞」が掲載されているが、私が調べた限りではliveが載っているのは『完全版 英文法・語法 問題集 Master 1000』(東進ブックス)(解答・解説編、p. 66)のみである。

 「liveは状態動詞だから進行形にならない」と思うのは勉強が浅すぎるとしか言い様がない。状態動詞であっても「一時的」の意味合いが加味される場合は進行形と成り得る。
a.     He is being kind.
b.     He is standing at the door.
c.      He is wearing the glasses today.
逆に、liveが進行形をとれることに触れている高校生向けの参考書をいくつか挙げておく。

(4) 『基礎と研究 現代英文法』(数研出版)p. 233
 「彼は鎌倉に住んでいる」
(a)   He is living in Kamakura.  (b) He lives in Kamakura.
(a)では、鎌倉は定住地ではない(「一時的に鎌倉に住んでいる」)のに対して、(b)では、鎌倉が定住地である。ただし、単に住所を示す場合などには、いずれを用いてもよい。

(5) 『新英文法』(数研出版)p. 66
 He lives in Tokyo.(彼は(ずっと)東京に住んでいる)
 He is living in Tokyo.(彼は今(一時的に)東京に住んでいる)

(6) 『4訂版 基礎からの新総合英語』(数研出版)p. 67
(a)   Lisa lives in Paris.(リーサはパリに住んでいる)
  (b) Lisa is living in Paris. (リーサは(今は)パリに住んでいる)
(a)   は定住していることを表し、(b)は一時的に住んでいることを表す。

(7) 『総合英語 be update』(いいずな書店)p. 71
 I’m living in New York.(私はニューヨークに住んでいます)
 liveを進行形で使うのは、引っ越しの可能性があるような場合(変化が感じられるから)。ある場所にずっと住んでいる場合には、I live in Tokyo.(東京に住んでいます)のように現在形を使う。

2014年3月14日金曜日

「時制の一致の例外」について


                                        
 91 I was taught at school that the earth (        ) around the sun.
  ① goes      ② went      ③ has gone      ④ had gone  (松山大)

                                        
91(①) 時制の一致の例外―不変の真理
 私は学校で地球が太陽の周りをまわっていると教わった。
視点➡過去時制 I was taughtに続くthat節の内容は,「地球が太陽の周りを回る」という,
特定の時間に縛られてない「不変の真理」。この場合,動詞の時制は常に現在形となる。
             ― 小崎充『英文法・語法 標準問題 厳選320題』(旺文社)
                                                   
日本の受験英語には標記の問題に見られるように、「時制の一致の例外」として、不変の真理は
時制の一致を受けない
という「迷信」(superstition)がいまだ根強いように思われる。

(1) 従節の内容が、一般的真理、現在の習慣、歴史上の事実、比較、仮定などである場合には、主節の動詞が過去時制でも、通例、時制の一致は行われない。
                          ― 安井稔『英文法総覧』(開拓社),p. 293


 <通例>と断ってはいるものの、基本的には<時制の一致は行われない>ということである。
おそらくその出所の一つがCurmeの次の解説であろうと推察される。

(2) Sequence of Tenses.  In English there is a general rule of sequence when a past indicative
precedes. When the principal proposition has a past indicative, a past tense form must usually
follow: "He wants to do it before his father comes," but "He wanted to do it before his father
came." "He says he will do it sometime," but "He said he would do it sometime." This usage,
though very old, is still for the most part firm. The old sequence, however, is not observed if it
is desired to represent something as habitual, customary, characteristic, or as universally true:
He asked the guard what time the train usually starts. He didn't seem to know that nettles sting.
Columbus proved that the world is round.
                            ― George O. Curme, English Grammar:118

時制の一致 英語には、過去の直説法が先行する際、一般的な一致の規則がある。主命題が過去の直説法であると、過去時制の形式が通常続かねばならない:「彼は父親が来る(comes)前にそれをやりたがっている」が「彼は父親が来る(came)前にそれをやりたがっていた」。「彼は自分が時々それをやる(will do)と言う」が「彼は自分が時々それをやる(would do)と言った」。この用法は、非常に古いものであるけれども、未だ大部分堅持されている。しかしながら、この古い一致は何かが習慣的、慣習的、特性的ないしは普遍的真理であるとはっきり述べたければ遵守されない:彼はその列車が通常何時に発車するのか車掌に尋ねた。彼はイラクサが刺すのを知らないようだった。コロンブスは世界が丸いことを証明した(下線池内)

 Curme「はっきり述べたければ」という条件付で時制の一致は守られないと言っているので
あって、習慣、慣習、特性、普遍的真理は時制が一致しないと言っているのではない。おそらく
はこのことを誤読し「時制の一致の例外」が絶対的なものだと信じ込んでしまったのではないか
と推察される。

 ところが実際は時制を一致させることが少なくない。イエスペルセンはこれを「心的惰性」(mental inertia)と呼んだ。

(3) the speakers mind is moving in the past, and he does not stop to consider
whether
each dependent statement refers to one or the other time, but simply
goes
on speaking in the tense adapted to the leading idea. In many combinations
it requires a certain effort to use the present tense, even if something is
stated as universally true at all times or as referring to the present moment
in contrast to the time of speaking.
   Consequently we cannot expect a rigid system of sequence of tenses to be
always strictly observed.
  ― Otto Jespersen, A MODERN ENGLISH GRAMMAR ON HISTRICAL PRINCIPLES11.1(3)

(話し手の心は過去の中で動いており、それぞれの従属節がどの時を述べるのかをゆっくり考えたりせずに、ただ主節に合わせた時制で話し続ける。多くの組み合わせにおいて、たとえ普遍的な真理として述べられたり、話している時と対照的に現在の瞬間を述べているとしても、現在時制を用いるには某かの努力が必要となる。結果として時制の一致という厳格な仕組みがいつも厳密に遵守されるとは思われない)

 つまり、たとえ「不変の真理」であっても時制を一致させても構わないということである。

(4) If somebody talked about a situation that has still not changed ― that is to say,
if the original speaker’s present and future are still present and future ― a reporter
can often choose whether to keep the original speaker
s tenses or change them. Both
structures are common.

   Direct:   The earth goes around the sun. 
  Indirect:  He proved that the earth goes/went around the sun.

                ― Michael Swan, Practical English Usage, new edition4824
(誰かが今でも変わっていない状況について話したとしたら、すなわち、元の発話者の現在や未来が今でも現在や未来であるとしたら、発話者は元の発話者の時制を留めるか変えるかをしばしば選択できる。どちらの構造も一般的である)
(5) The speaker will often use an absolute tense to make clear that he believes
in the truth of the statement.
e.g.  The ancient Greeks did not know yet that the earth is/was round.Is shows that speaker B believes that the earth is round; was is just non-committal: speaker B does not affirm that he believes this(even though he
probably does).
   ― Renaat Declerck, A Comprehensive Descriptive Grammar of English, p. 523

(話者は発言が真実であると自分が信じていることを明確にするためによく絶対時制を使う)
(6) 日本では、永遠の真理は、現在時制で述べなければならないと説かれている。
 ◎Galileo was the first man to realize that the Earth goes round the sun.
 [地球は太陽のまわりを回っているということに最初に気付いたのはガリレオだった]
しかし、永遠の真理を表す場合、過去形も正しく、特にthat以下の内容の真偽に関して何らかの疑念(doubt)がある場合、過去形の方が好ましい。
 ◎The authorities refused to accept that the Earth went round the sun.
 [時の権力者は、地球が太陽のまわりを回っているという説を認めなかった]
             ― G・ワトキンス『英語を診る』(進学研究社),pp. 140-141
したがって、標記の問題は過去形を用いて
(7) I was taught at school that the earth went around the sun.
として何ら問題がない。
(8) 時制の一致…は規則ではなく1つの傾向として考えておくのがよい。
               柏野健次編『英語語法レファレンス』(三省堂)、p. 350
 時制の一致が絶対的なものでない以上、時制を一致させるかさせないかをテストで問うのはナンセンスである。実際、有名で定評のある大学受験用の英文法・語法問題集を見ても、『Next Stage』(桐原書店)3rd editionや『UPGRADE』(CHART INSTITUTE)改訂版には「時制の一致」の項目すら見られないし、『Vintage』(いいずな書店)も「時制の一致」の一般的な解説があるだけである。
 次に、「歴史的事実」における時制の一致を考えてみたい。例えば、
(9) I know that World War II ended in 1945.
を時制の一致でback shiftすれば、
(10) I knew that World War II had ended in 1945.
となろうが、多くの文法書が歴史的事実は大過去形ではなく過去形を用いるとしている。
(11) ex. 先生は生徒たちに「第2次世界大戦は1945年に終わった」と言った.

《直》The teacher said to the pupils, The Second World War(またはWorld War IIcame to an end in 1945.

《間》The teacher told the pupils that the Second World War came to an
end
in 1945.
注意 ... that the Second World War had come ... とするのは誤り.

            ― 中尾清秋『基礎と演習 英作文』(CHART INSTITUTEp. 93
 が、河上道生氏はこれに異議を唱える。
(12) これは被伝達文の内容が「歴史的事実」である場合の例であるが、この場合も時制の一致に従ってcamehad comeとすることは決して誤りでない。

   ― 河上道生J.D.Monkman『英作文参考書の誤りを正す』(大修館書店),pp. 64-65
さらに次のような指摘もある。
(13) 主節の過去時制に引かれて惰性で時制の一致が行われることもある歴史的陳述や一般的真理の場合でもこの惰性での時制の一致は見られる。

  He said that World War I had broken out in 1914.
  My teacher said that two and three made five.

                   柏野健次編『英語語法レファレンス』(三省堂)、p. 351
 しかしながら、たとえ大過去形を用いるのが可能だとしても、あまり一般的だとは思われない。が、それは「時制の一致の例外」と言うよりも、一般に大過去形よりも過去形が好まれるからだと言うべきであろう。
(14) 「歴史的事件」についても、学校文法は時制の照応をうけない場合として説明してきたが,それは、時制の照応が生じないというよりも、むしろ、話し手が発話時を基準として(つまり、直示時制を選んで),過去の事件を述べている以上、過去時制は選ばれるべくして選ばれたのだ,と言うべきである.発話時を基準時とする場合は15世紀の事件であろうと10年前の事件であろうと、すべて同一の過去時領域に起こったものとして、とらえられるのである
                            ― 安藤貞雄『現代英文法講義』(開拓社)、p. 697